第1152回 COVID-19終息までに何人が死ぬのか?

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米国ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、2020/5/16の時点で新型コロナウイルス感染症による死者が世界全体で31万人を超えた。
1~2日ごとに1万人以上の死者が増える状態が1カ月半以上にわたって続いており、被害拡大は衰えていない。感染者は460万人を上回った。


集団免疫率
一般的に集団免疫が機能するには「Z>1-1/R0」という関係が成立する必要がある。
安倍政権が採用している基本再生産数R0=2.5に科学的根拠は無いが、この数値で推計してみよう。
人口のZ%が免疫を獲得したとすると、1人のウイルス保有者が平均的に感染させる人数は確率的に2.5×(1-Z)人となる。この値がゼロに収束する条件は、数学的に「2.5×(1-Z)<1」であり、これは「Z>1-1/2.5=60%」になる。
すなわち、基本再生産数(R0)が2.5のケースでは、集団免疫率(Z)が6割になると、感染が終息に向かうことを意味する。
因みに、基本再生産数(R0)が1.4のケースでは、集団免疫率(Z)は約3割になると終息に向かうことになる。

WHOの推定が妥当で、新型コロナウイルスの基本再生産数(R0)が1.4~2.5の範囲であれば、最終的に感染する人口割合の目安は3割~6割となる可能性を示す。
日本の総人口は約1億人なので、集団免疫を獲得するまでの感染者数は約3000万人~6000万人となる。(独立法人経済産業研究所 小黒 一正)

日本赤十字社が東京と東北で500人分ずつ集めた献血の検体を使って抗体検査キットの性能評価をした。陽性率は東京都の500検体で最大3例の0.6%、東北6県の500検体では最大2例の0.4%だったと発表された。厚生労働省は検査キットごとに結果のばらつきがあり、正確な評価は出来ないとしている。
また、抗体検査の結果から割り出した新型コロナの致死率は欧米においてもバラツキが大きい。米国のデータではアフリカ系とヒスパニック系の死亡率が高く、日本に適用するには無理がある。

故に、厚生労働省が発表したPCR検査陽性者と死亡者を見るのがより現実的だろう。5月17日の時点では。各々16,285人/744人であり致死率は4.6%となる。これに基づいて単純計算すると、集団免疫を獲得するまで138~276万人が死亡することになる。

免疫学の第一人者と言われる大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂教授は、「“自然免疫”と“集団免疫”があり、自然免疫だけでウイルスを撃退することもあるから、抗体の量や陽性率だけを見ていても集団免疫ができているかは判断できない可能性がある」、「西浦教授が言っているような何も対策をとらなければ集団の6割が感染してしまうというような状況は起こっていません。中国湖北省武漢市でも、またクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスでも感染した人は全体の2割程度で、集団の6割も感染をするようなことは観察されていない。その理由は大きな流行が始まると、人は隔離措置をとり、接触制限をするようになるからで、それとともに実効再生産数が小さくなるのです。これが、実際に武漢市やダイヤモンド・プリンセスで起きていたことではないかと私は考えています」、「一部の人たちは自然免疫と獲得免疫の両方を使って不顕性感染の形でウイルスを撃退したのかもしれませんが、かなりの人たちは自然免疫だけを使ってウイルスを撃退した可能性があるのかもしれない」とし、新型コロナウイルスの集団免疫閾値はたぶん20%だと思うと締め括っておられる。

この宮坂教授の2割説を取っても、集団免疫を獲得するまで92万人が死亡することになる。


外出自粛などの緩和で感染の再拡大が懸念される。

東大の大橋順准教授は、外出自粛などを解除した場合に、感染者がどれだけ増加するかを試算した。
人口10万人の都市を想定。患者1人が何人の患者に感染を広げるかを示す「実効再生産数」は2.5人として、患者が50人に達したときに外出制限などを実施した。患者数はいったん減少するが、制限の開始から60日後に解除すると30日後には感染者が50人まで戻った。1000万人の都市でも、自粛解除から30日後には感染者数は元に戻る。

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米アイオワ大学の研究チームは4月の報告書で、4カ月以内に制限を解除して元の生活に戻れば、第2波がおこる可能性が高いと分析している。

すでに都市封鎖(ロックダウン)などを解除した国で感染者が再び増加している。
ドイツでは大規模な外出規制を緩和した後、0.65だった実効再生産数は1を上回った。実効再生産数が1を上回ると感染が拡大していることを示す。
韓国のソウルでは外出規制を緩和したのち、ナイトクラブを訪れた人たちの間で集団感染が発生した。
中国の湖北省武漢市でも都市封鎖解除後に再び感染者が見つかっている。
吉林省と遼寧省でも8千人超が隔離されたという。
(2020/5/16 日本経済新聞 電子版)

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戦略・戦術を大別すると上表の通りで、日本はR0=2.5をベースに接触8割制限でのRt=0.5達成と言っていますが、場当たり的な「点の展開」であり、「線の展開」「面の展開」がさっぱり見えてこない。
どんな戦略・戦術にもメリットとデメリットがあるが、安倍首相のスピーチは戦時下の大本営発表を彷彿とさせる。国民はそんな手には騙されない。
来るべき第2波に備えて、客観的データに基づいた戦略・戦術を前広に構築し、そのメリットとデメリットを国民と共有し、国民の生命・財産および社会全体への被害を最小限に抑える形で取り組んでいただきたい。
単なる専門家の意見は、エビデンスとしてヒエラルキーの下位にあることを想起して欲しい。

最後に、
今後も新型コロナに関する様々な研究報告を記事にしようかなとも思ったのですが、当ブログのジャンルは元来ダイエット&フィットネスなので、これにてThe Endにしたいと思います。

追記:
この記事↓は日本では45万人が亡くなったスペイン風邪について書いています。
一読してみてください。因みに、スペイン風邪の基本再生産数はR0=2~3です。

“日本はパンデミックをいかに乗り越えたか~100年前のパンデミック・スペイン風邪の教訓”





この記事へのコメント

sakura
2020年05月19日 09:40
covid19の話、大変興味深く拝見しています。これで終わりと言わず、もっと記事をを出して頂けると嬉しいです。
M爺
2020年05月19日 22:49
使命感、責任感を捨て、皆が同じ浅瀬で水をかけあうだけのマスコミ報道に辟易しています。本ブログは核心に迫る情報に飢える者として大いに貴重です。今後とも是非続けていただきたいと希望する次第です。
Meddlesome181
2020年05月20日 09:12
sakuraさんへ:

承知しました。
「第1143回 新型コロナウイルス感染症…マイメモ」も都度アップデートしますので、こちらも併せてご覧ください。
頑張ります。