第1173回 新型コロナに対する国家戦略(米国 vs 日本)

2012/2/12 アップデート
菅政権のコロナ対策をダイエットになぞらえて分かり易く説明しています。

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2021/1/22付け、バイデン大統領から “National Strategy for The Covid-19 Response and Pandemic Preparedness…新型コロナ対策とパンデミック準備体制への国家戦略”が発表されました。「われわれの国家戦略は、科学者と公衆衛生の専門家が国民に直接的/定期的に伝えつつ推進される。科学と公衆衛生にのみ基づいて決定されるので、そこには政治的な干渉は介在しない」と記されています。
詳しい内容についてはNHKが “米バイデン大統領 “最優先課題” 新型コロナ国家戦略を発表” で報道しているので参照してください。

<マイコメント>

不正確な報道は情報弱者に大きな誤解を与える

NHKの記事では、例えば「Goal 3:感染を抑え込む」といったように「感染」という単語が随所で散見されますが、原文では感染という単語は一切使われていません。タイトルを見れば明らかなように”pandemic”という単語が使われています。つまり、COVID-19という感染症のpandemicなのです。因みに、Oxford辞書にはPandemicは “prevalent over a whole country or the world…全国または世界的な流行”と記されています。

更に、他の報道記事もそうですが、感染を「抑え込む」とか「封じ込める」といったニュアンスとして“十分/徹底的”の意味合いを包含する強調的な訳語が当てられています。
しかし、Goal 3の原文は、“Mitigate spread through expanding masking, testing, treatment, data, workforce, and clear public health standards“とあり、ここで言う”mitigate”とは「make (something bad) less severe, serious, or painful」、つまり、COVID-19の蔓延(spread)を「和らげる/軽減する/抑制する」と言う意味です。
更に、“A comprehensive national public health effort to control the virus — even after the vaccination program ramps up — will be critical to saving lives and restoring economic activity…ワクチン接種が増えても、ウイルスをcontrolするための包括的な国家的公衆衛生の取り組みは、人命を救い経済活動を回復させるために不可欠である“と続いており、control(コントロール)という単語が使われています。
感染および重症化のリスク因子として下表で纏めたような“Factor-X”が解明されていないので、公衆衛生的な諸要因やワクチンだけで”鎮圧する“と言った強い表現は出来ないのだと思います。

COVID19リスク因子(最新.png


あなたはワクチンには感染を防ぐ効果があると誤解していませんか?

ワクチンは感染症に有効です。しかし、上述したように安易に「感染」と単語を使うことで、“ワクチンは感染の防止にも効果がある”と言った誤解も生まれます。
分かり易く説明すると、COVID-19ワクチンには発病や重症化を軽減する効果は期待できますが、感染防止については実証されておらず、このことは厚労省も認めています。
「感染」・「発病」・「重症化」の定義(厚生労働省)を読み返してください…“第1168回 ここがおかしい!新型コロナ報道”、“第1166回 インフルエンザワクチン接種の有効性?


COVID-19ワクチンの副作用

米国ではトランプ元大統領の色濃い政治的干渉で、COVID-19ワクチンの接種は始まりました。世界保健機構(WHO)が承認した米国ファイザー製のワクチンを含めて、COVID-19ワクチンの副作用リスクは払拭されていません

2021/1/22の時点で、人口100万人あたりの死者数は米国では65.0人で、日本の6.1人の約10倍です。故に、米国で重症化を防ぐワクチン接種の意義は日本よりも大きいと言えます。
しかし、有効性が95%と言われる米国モデルナが開発したワクチンは、カリフォルニア州では疫学者Dr Ericaが、副作用があるので使用を取りやめるよう警鐘を鳴らしています…Medscape/California Urges Stop to 300K COVID-19 Vaccines After Some Fall Ill

新型コロナ感染症のワクチンに副作用リスクがあることは厚労省もこちらで認めています。
しかし、菅首相の政治判断で緊急性が優先されてワクチン接種が始まります

このような状況ですので、ワクチン接種については皆さん良く考えた上で行動するよう助言します。因みに、AERAが1/25号の新型コロナに対するアンケート調査で、現役の医師1726人に接種の意向を聞いたところ、「接種する:31.4%」、「ワクチンの種類によっては接種する:27.3%」、「接種しない:11.8%」、「わからない:29.5%」でした。


日本の国家戦略

客観的なデータに基づいた国家戦略と言えるものは全く見えてこない。
「科学的知見に基づいた目標設定」および「線の展開/面の展開における戦略・戦術」が明確でなく、パニックになった世論に場当たり的に流され、コストと被害を無駄に膨らませる”too little & too late”な対策をやっているとしか思えない。

ついでながら、
菅首相は、昨年10月の所信表明演説で「対策と経済の両立」を宣言しましたが、ダイエットに喩えると“筋肉を増やしながら、体脂肪を減らす”と同じことで、まるでダイエット初心者のようです。

人が動けば金は動くが感染も広がる!
ダイエットでアンダーカロリーにすれば体脂肪は減るが筋肉も減少する!
いずれも二律背反の事象です。
どちらかに偏り続き過ぎるとうまく行く筈もありません。

“オーバーカロリーや実効再生産数が1を超えては、体脂肪は減らないし感染は終息しない”ことを再認識し、“十分なたんぱく質(助成金)と高強度の筋トレ(徹底的対策)で、筋肉の減少(経済崩壊)を抑止しつつ、体脂肪(COVID-19/医療崩壊)を減らしていく”という基本的な戦術をperiodicallyに巧みに展開することが肝要ですが、現実として菅首相はオーバーカロリーの状態で経済に偏り過ぎた方策を採ってしまった。


基本再生産数(R0)と実効再生産数(Rt)

基本再生産数(R0)と実効再生産数(Rt)の意味、これらに基づく戦略/戦術、および集団免疫獲得までの死者数など詳細については、“第1157回 COVID-19 パンデミックについて(中間まとめ)”や“ 第1145回 新型コロナウイルスいつになったら収束するの?”を参照いただきたい。

要は、基本再生産数(R0)とは、感染力のある一人の感染者が、免疫の獲得または死亡により、その感染力を失うまでに何人の未感染者に伝染させたかの目安で、その病原体の感染力の指標です。
基本再生産数は何も対策を取らなかった場合の数値であり、手洗いやうがい、或いは、接触削減やロックダウンなど対策が取られれば、1人の感染者が実際に直接感染させる人数は減ります。こうした実際の再生産数のことを実効再生産数(Rt)と言います。
換言すると、「新規感染者数が減少に転じる」というのは、「実効再生産数が1を下回ったとき」のことを指します。因みに、いわゆる第3波での実効再生産数は1.54人となっています。

RO<1戦略とはROを1未満に抑え込むことで短期間に感染を収束させるもので、ロックダウンが代表的です。
他方、小池都知事の「ウィズ コロナ宣言」や菅首相の警戒ステージを「ステージ3」に戻すといった発言が裏付けるように、日本が実際にやっている戦略は1≦R0<2(R0~1)です。これはR0を急いで1未満にはすることは追求せず、「自粛」や「クラスター対策」でR0を1≦R0<2に保つことで感染拡大の速度を抑え、同時に一定程度の感染の拡大を許容することで免疫を持つ人を増やし、時の経過とともにRtが1を下回ることで感染を鎮圧するというものです。この戦略は手段としてはマイルドだが、鎮圧までに長い時間を要し、対策を継続できるか否かが鍵となります。
現に、go Toキャンペーンの推進、海外ビジネス関係者の一時入国緩和、オリンピック開催ありきの考え方が拍車をかけて、国民のコロナ危機感は薄れてしまい、緊急事態宣言の発令後も依然として3密ゆるゆるで混雑している。巣ごもり疲れの高齢者の昼間外出も増えており、特に若年層は重症化しないとの安心感から気に留めていない。

因みに、2021/1/7付けでJAMA Networkに掲載された米国疾病管理予防センター(CDC)のMichael A. Johansson氏らによる研究“SARS-CoV-2 Transmission from People Without COVID-19 Symptoms”で、無症状の感染者からの感染割合について決定分析モデルを用いて検討した結果、全感染の半分以上を占めることが示唆されている。


集団免疫
新型コロナを収束させるには、パンデミックを抑制しつつ、医療崩壊を防ぎ、経済的に困窮する人を支援し、集団免疫をもつ状態に持っていくことです。最近では、「若年者など低リスク集団における感染獲得によって集団免疫の発達につながり、最終的には基礎疾患を有する人や高齢者などを保護することになる」という集団免疫への新たなか関心が生まれています。しかし、この考え方は「科学的根拠のない危険な誤り」であり、現段階ではCOVID-19の感染制御こそが社会や経済を守る最善策です。


頑張ってください菅首相!
現行のままの方策では、集団免疫を獲得しコロナを鎮圧するのに長い期間を要し、その間に医療崩壊の危機、命の選択、高齢者の死亡増といった問題は絶えず出てくるでしょう。スウェーデン政府はウイルスとの長期戦で国民を疲弊させないとの考えから、外出制限や店舗の営業停止など、厳しい措置を見送ってきました。しかし、最近カール16世グスタフ国王が、新型コロナウイルス対策で厳しい規制を設けない同国の対策について「私たちは失敗したと思う」と述べています。

まだまだ書くべきことは山ほどありますが、菅内閣の支持率が続落している折から、マスコミの尻馬に乗って菅首相を叩くのは小生の好むところではありません。ここらで筆をおくこととし、菅首相にはぜひとも頑張ってもらいたく、エールを送りながら静観したいと思います。現行のやり方を見直して/有効な感染防止策を実施して、新型コロナを鎮圧していただきたく英断を期待しています。

追記:2021/2/12
Care Netが昨年10月に会員医師1,027に行った新型コロナワクチン接種に関するアンケートでは、ワクチン接種希望者は61.2%だったが、1月27日(木)~2月3日に行われた2回目のアンケートでは980人から回答があり、ワクチン接種希望者は82%に増加したとのことです。



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