Nice Body Make・・・よもやま話

アクセスカウンタ

zoom RSS 第980回 高炭水化物食はインスリン分泌に悪影響を及ぼす

<<   作成日時 : 2016/10/14 05:49   >>

トラックバック 0 / コメント 0


「炭水化物54.7%+脂質31.5%(飽和脂肪酸12%/一価不飽和脂肪酸13.1%/多価不飽和脂肪酸6.4%)+たんぱく質13.8%」の食事から、7%の飽和脂肪酸を炭水化物に置き換えて高炭水化物食にすると、インスリン分泌に悪影響を及ぼすというマレーシアMalaya大学Lin F. Changらによる研究報告です。

画像


The journal of Clinical Lipidology
2016 Sept.
Adverse effects on insulin secretion of replacing saturated fat with refined carbohydrate but not with monounsaturated fat: A randomized controlled trial in centrally obese subjects

ハイライト

・MUFA食はCARB食に比べて空腹時GIPレベルを高める。
・インスリン分泌および消化管ペプチド分泌はSAFA食とMUFA食では同等である。
・CARB食はSAFA食/MUFA食に比べて食後インスリン-グルコース比を低減する。

注1:MUFA=一価不飽和脂肪酸、CARB=炭水化物、SAFA=飽和脂肪酸
注2:消化管ペプチド=GLP-1/GIP/グレリン/PYY/CCK
注3:GIPは膵β細胞からインスリン分泌を促進する作用以外に、栄養素を脂肪細胞に蓄積する作用も有している。


背景:
WHO(世界保健機関)然り、現行の食事ガイドラインは、脂質プロファイルのエビデンスのみに基づいて、飽和脂肪酸(SAFA)を10%未満に抑えて炭水化物(CARB)または一価不飽和脂肪酸(MUFA)に置き換えることを推奨しているが、このような置き換えがインスリン分泌とインスリン感受性に及ぼす慢性的な影響についは明らかになっていない。

目的:
腹部肥満の被験者では、“SAFA”から“精製された炭水化物”や“MUFA”に置き換えると、インスリン分泌とインスリン感受性にどのような慢性的な影響が出るのかを評価することである。

方法:
クロスオーバーデザイン、無作為化比較試験、
年齢20 〜60歳(平均32.8 ± 8.7)、体重74.2 ± 14.6kg、ウエスト:≥80 cm (女性) 、≥90 cm (男性)の腹部肥満の男女54名を被験者として、飽和脂肪酸の多いSAFA食(対照群)の約7%エネルギー相当の飽和脂肪酸を、炭水化物(CARB)または一価不飽和脂肪酸(MUFA)に置き換えた3つの食事を各6週間割り当てた。
各食事/6週間ごとに空腹時および食後の血液検査を行った。

画像


食事の栄養比率について、上表は分かり易くするために数字を丸めていますが、詳述すると下表の通りです。

画像


結果:
被験者の体重に変化はなかった。各食事への遵守率はSAFA食97.1 ± 4.4%、CARB食98.0 ± 3.2%、MUFA食97.1 ± 5.1%であった。
予想の通り、食後の非エステル型脂肪酸(遊離脂肪酸)の抑制、C-ペプチドの昂進、インスリン分泌及びグルコース分泌はCARB食で最大だった。 
興味深いことに、CARB食後にグルコースに対する修正インスリン分泌能が弱まった。しかし、インスリン感受性とDI値(インスリン感受性xインスリン分泌能から求められる)は影響を受けなかった。
食後のグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチドは、CARB食に比べて、SAFA食ではなくMUFA 食後に高まったが、それ以外のすべてのマーカーについてはSAFA食とMUFA 食いずれも影響は同じであった。


画像


(注)上表はSAFA食/CARB食/MUFA食の食後Cペプチド(A)、インスリン(B)、グルコース(C)、遊離脂肪酸(D)、GLP-1(E)、GIP(F)、グレリン(G)、PYY(H)、CCK(I)を示しています。


ディスカッション&結論:
本研究は、飽和脂肪酸を炭水化物または一価不飽和脂肪酸に置き換えた場合、空腹時ならびに食後のインスリン分泌、インスリン感受性、グルコース恒常性、及び消化管ペプチド(GLP-1/GIP/グレリン/PYY/CCK)の分泌にどのように影響するか調べるために、腹部肥満の被験者を対象に3 x 6週間の食事介入を行ったものである。
飽和脂肪酸エネルギー7%相当を炭水化物または一価不飽和脂肪酸に置き換えると、予想の通り、主要評価項目の食後Cペプチド絶対レベルは、炭水化物への置き換え食でよりいっそう顕著な変化を示した。
CARB食後に血漿中インスリンは過度に増加したにもかかわらず、血漿中グルコースのピークは、国際糖尿病連合が規定した健常者の食後の標準的な血糖応答(<7.8 mmol/L)より19%高くなっていることが分かった。
更に、コーカサス人(白色人種)を対象とした研究でインスリンピークは食後30分後との報告があるが、東南アジア人を被験者とした本研究ではインスリンピークは遅くて食後2時間であり、これはインスリン感受性が損なわれていることを示している。
それゆえ、東南アジア人が習慣的に食している精製された炭水化物を多く含む高炭水化物食(約60%)が2型糖尿病の発症を高める素因ではないかと推察している(資料25)。
また、高炭水化物食(CARB食)後のグルコースに対する修正インスリン応答は、高脂肪食(SAFA食/MUFA食)に比べて低減する傾向があることが分かった。
本研究で被験者に割り当てられた炭水化物量(158g)は、パスタやチャーハンなど果糖飲料付きの東南アジアにおける典型的な定食である。従って、腹部肥満者のケースでは、精製された炭水化物を中程度に含む食事に炭水化物量を7%ほど増やすとグルコースへの修正インスリン応答は低下し、インスリンの過剰分泌に反復して晒されることにより、膵臓のβ細胞は疲弊しアポトーシスに至り、延いては2型糖尿病への発症リスクが増大する可能性があることを本研究は暗示している(資料26,27)。
他方、炭水化物に応答してインスリン分泌が高まり脂肪分解を阻害するので、高炭水化物食後の遊離脂肪酸の抑制は、高脂肪食(SAFA食/MUFA食)に比べて大きいことが分かった。
我々の調査結果と合致して、他のいくつかの研究が炭水化物:脂質比率が高くなると食後の血中遊離脂肪酸レベルは低減することを示している(28,29)。これは高脂肪食による遊離脂肪酸の横溢に歯止めをかけるインスリンの抑制効果だと説明できるだろう(30)。高炭水化物食による遊離脂肪酸の抑制は体脂肪の蓄積を促す。

更に、本研究は上述のように脂質の質(SAFA or MUFA)と量(7%)を変えても、HOMA2-%Sによる測定やグルコース恒常性で示されるように、空腹時のインスリン分泌とインスリン感受性は変わらないことを実証した。
健康な被験者での我々の先行研究(17)、インスリン抵抗性の被験者での2件の大規模研究(7)及びメタボリックシンドロームの被験者での研究(6)の通り、我々の研究結果はSAFAが豊富な食事は、インスリン感受性に及ぼす影響に関しては、炭水化物やMUFAと同程度であることを示した。
RISCK(7)及びLIPGENE(6)いずれの研究でも、SAFAを炭水化物やMUFAに置き換えてもインスリン感受性とグルコースに対する急性インスリン応答に有意差が生じなかったことが分かっている。しかし、もう一つの大規模研究KANWU研究(5)では、SAFAとMUFAによる療法効果に際どい有意差があることが報告されている。この研究では、SAFAによってインスリン感受性はベースラインに比べて損なわれたが、インスリン分泌および第一相インスリン応答では目立った差は検出されていない(グルコースに対する急性インスリン応答は測定されていない)。
被験者の自由生活における総脂肪摂取量は29〜45%と大きなばらつきがあること、更にSAFA群ではベースラインでインスリン感受性が脆弱であることが、KANWU並行試験の知見を混乱させている可能性がある。我々の研究ではクロスオーバーデザインで、食事は一元的に用意することでそのような限界を解消している。さらに、われわれの研究ではSAFA/CARB/MUFA食後のDI値は同様だったが、上記4つの研究のいずれも測定をしていない。

消化管ペプチドの同時変化に関する我々の調査は、他のほとんどの研究では顕著ではない。我々はMUFA食と比較してCARB食後に空腹時GIPレベルが低減したことを観察した。この観察は新規である。
空腹時GIP濃度の減少はインスリン感受性の改善と関連しているという確固たるin vivo エビデンスがある(31,32)
しかし、われわれの調査結果はこの観察と一致しなかった。
この矛盾は、6週間のCARB食の後に観察されたような空腹時GIP濃度の減少が膵臓内作用に関連していない可能性があることを示唆している。
これは、二つの短期の食事介入研究で説明できる。つまり、高脂肪の過剰摂取は恐らく脂肪沈着(脂肪蓄積)が原因で空腹時のGIP濃度を高めたのではないかと報告されている(3334)。そこでは、GIPが脂肪組織上の受容体と結合して脂肪組織量を増やすと説明されている(35)。
CARB食群で観察されたような空腹時GIPレベルの減少は、脂肪蓄積が少ないことを示していると考えられるが、さらなる確認が必要である(31)
しかし、われわれは高精度の体組成計で測定したが、各食事間で体組成の有意な変化は認められなかった。
食事性脂質の質(SAFA/MUFA)や量(7%)の置き換えに関係なく、空腹時GLP-1グレリン、PYY及びCCK濃度の有意な変動は検出されなかった(35, 36, 37, 38, 39, 40)

本研究では、グルコース応答性インスリンの曲線下面積(iAUC0–120分)が示すように、
各食事の間で消化管ペプチド反応の有意な差異は認められなかった。
初期段階でのGLP-1およびGIPのスパイクは、CARB食後にグルコースレベルが顕著に昂進し、インスリン分泌が高まりグルカゴンの分泌が阻害されたが、これらに応答して起こった。
GLP-1 及びPYYの増加は健康な成人を対象とした3時間測定で高炭水化物食よりも高脂肪食の方がより大きいことが分かっているが(41,42)、本研究ではそのような違いは観察されなかった。
本研究における肥満者のケースでは、高脂肪食によるGLP-1やPYYの応答が損なわれるのは、インスリン抵抗性やグルコース恒常性の低減によるものと考えられる。
健康な被験者のケースでは、食後3時間のグレリン抑制は脂質よりも炭水化物の方が大きく影響するという研究もいくつかある(44)。
しかし、炭水化物によるグレリンの抑制/平滑化は腹部肥満の過体重の被験者で示された。
これは、肥満者における食後グレリン応答が主要栄養素組成とは無関係であるという知見に準じている(42,45)
高炭水化物食に比べて高脂肪食はPYYおよび CCK応答を一層に誘引するが(42,46)、すべての食事に当てはまるわけではない(39,41)ことをいくつかの研究が報告している。
リーンな男性と肥満男性を被験者として高脂肪食と高炭水化物食を比較している二つの他研究と合致して(47,48)、食事に含まれる脂質量を置き換えると食後のPYYおよび CCKに与える影響は同様であることが、肥満者を対象とした本研究で明らかになった。
PYYおよびCCKの脂質感知作用は過体重または肥満者ではあまり敏感ではないようである。
脂質の質と量が消化管ペプチドに及ぼす効果差は、大半が空腹時グルコース異常とインスリン抵抗性を有する腹部肥満の当該被験者では見られなかった。
消化管ペプチドの分泌は、脳と腸の間の神経性/体液性の相互作用によって制御されるため、消化管ペプチド障害は脳―腸のミスコミュニケーションをもたらす可能性がある(49)。

このような異常調整は、過食や肝グルコース産生の脱抑制を引き起こし、肥満や代謝不全の発症を促すであろう(49)。
本研究には何点かの長所はあるが、次のような限界(Limitation/短所)もある:
本研究の被験者は腹部肥満の過体重で、被験者登録前にインスリン抵抗性や診断未確定の高血糖だった人が多いこと。したがって、本研究の調査結果を他のすべての人たちに一般的に適用することはできない。
・被験者は高リスク集団、つまり糖尿病を発症しやすいと云われる東南アジア人であるということ(50)。

結論として、腹部肥満の過体重の男女を対象とした6週間の等カロリー食による介入で、飽和脂肪酸7%エネルギー相当を炭水化物に置き換えると、グルコースに対する修正インスリン応答が損なわれたが、インスリン感受性/グルコース恒常性/消化管ペプチドには影響しないことがわかった。
予想されたように、高炭水化物食はインスリンとグルコースの分泌を高めたが、これは修正インスリン・グルコース比の減少によって証明されるように、長期的には膵β細胞の機能に有害であると考えられている。しかし、脂質の種類、つまり飽和脂肪酸または一価不飽和脂肪酸が、空腹時/食後の条件下でグルコース恒常性、インスリン感受性、インスリン分泌、消化管ペプチド分泌に及ぼす影響に差異は見られなかった。

関連記事
第576回 太り過ぎのあなたのダイエットの邪魔をするのは?
第704回 ダイエット vs インスリン感受性
第706回 ダイエット vs インスリン抵抗性
第811回 炭水化物は太るってホントなの?
第874回 さようなら低脂肪ダイエット!?
第908回 小麦粉や白米はなぜ良くないのですか?
第928回 炭水化物の質/量と2型糖尿病リスクとの関連性
第933回 インスリン抵抗性は脂質の置き換え効果を左右する
第963回 白米を食べると太りやすい?





テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

第980回 高炭水化物食はインスリン分泌に悪影響を及ぼす Nice Body Make・・・よもやま話/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる