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zoom RSS 糖質制限/ケトン産生食が体組成(水分/体重/体脂肪)に及ぼす影響

<<   作成日時 : 2017/05/01 18:05   >>

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水分の減少

糖質制限/ケトン産生食(Ketogenic Diet:KD)に関する初期の研究の殆どが、方法論的な誤りで水分と脂肪の減少を混同していた。つまり、体重減少のみに傾注して、脂肪/水分/筋肉量を区別していなかったのである。このような潮流の中で、50〜60年代に行われた研究の多くが、“低炭水化物食は高炭水化物食と比べて減量効果が大きい”という魔法のような魅力的な結果を示した。

加えて、KDが “fat mobilizing substance” つまり、脂肪の動員(脂肪分解→血中脂肪酸)を促し脂肪減少を高める物質の分泌をもたらすことが示唆されたが、結局はこの物質が同定されることはなかった。

こういった研究では、肥満者は2600kcalの低脂肪/高脂肪食で減量できたが2000kcalの高炭水化物食では減量できなかったとして、低炭水化物食の優位性を主張している。御如才なきことながら、これらは真実から掛離れた夢のような話である。

数日間での体重減少の5〜15lbs(約2〜7kg)は水分だと報告されており、同じ実験デザインを用いたその後の研究でも、脂肪の減少とみなされた体重減少は実は水分であり、低炭水化物食に臨床的に有意なmetabolic advantageはないことが明らかにされている。

補足説明:
第338回 リバウンドに及ぼす三大栄養素の影響」で説明したように2012年にLudwig et alによって低炭水化物食のmetabolic advantageが報告されています。
しかし、その後のDr. Kevin Hall et al.による一連の研究「第955回 高炭水化物食をケトン食に代えると代謝量と体組成は向上するのか?」、「第893回 体脂肪を減少させるには脂質と糖質どちらを制限するのが良いか?」、「Obesity Energetics 2017年: Body Weight Regulation and the Effects of Diet Composition」によって否定されています。


維持カロリーでのケトン産生食

糖質制限/ケトン産生食(Ketogenic Diet)はカロリー欠損なしで脂肪が減少できると広く信じられている。換言すると、ケトーシス状態による特有のカロリー欠損や代謝昂進が生じることで、カロリー制限しなくても脂肪の減少がもたらされるということになる。定性的/理論的にはそのようなカロリー欠損を創り出すメカニズムは存在する。例えば、尿中‣息中のケトン減少は、カロリーが空費される1つのメカニズムを示している。しかし、定量的にはケトンが最大限に排泄されたとしても1日当たり100kcalにしか過ぎないことを忘れてはいけない。

さらに、ケトンは4.5kcal/gだが遊離脂肪酸は9kcal/gなので、同じエネルギーを身体に供給するためにはケトン体の方が多くの脂肪が使用されることになる。体内に45kcalのエネルギーを供給するためには10gのケトン体が必要であり、肝臓で10gの遊離脂肪酸を分解しなければならないが、直接使用される場合は5gの遊離脂肪酸しか必要としない。したがって、ケトンを生成するために追加の5gの遊離脂肪酸が空費できると考えているようだ。

しかし、ケトン由来のエネルギーの殆どが脳以外の組織で使われるのはKDを始めて数週間のみであり、この期間を過ぎればケトン由来のエネルギーに有意に依存するのは脳だけである。つまり、ケトン4.5gがグルコース4kcalに置き換わることになるが、これが定量的/臨床的に大きな脂肪減少をもたらすとは考え難い。

多くの人たちがKDによる最大の脂肪減少は最初の数週間に起こると逸話的に語っているが、このパターンを示す研究は見当たらない。1つの研究だけが維持カロリーで長期KDを調べている。それは上級サイクリストを被験者とした4週間の研究で、約2.5kgの体重減少が見られたが、炭水化物をrefeedすると直に元に戻ってしまっている。この研究での体重減少は水分やグリコーゲンの減少であって、脂肪の減少ではない可能性が極めて高い。

ウェイトトレーニングの場合はどうなのかは明らかになっていない。しかし、KDが代謝に影響を及ぼしてカロリー欠損の条件下で脂肪が減少するとは思えない。


摂取量1200kcal未満の超低炭水化物/ケトン産生食の場合は如何であろうか?

Protein sparingの研究と同様に、研究結果に大きなバラツキが見られる。多くの研究が非ケトン産生食に比べて体重および脂肪の減少は大きくLBMの減少幅は小さいことを示しているが、その逆を示す研究も数多く存在する。その理由は、研究が短いこと、たんぱく質の摂取が不十分であること、摂取カロリーレベルが非常に低いことなどが挙げられる。

補足説明:
糖質/脂質の使用を優先させて、筋タンパクなど蛋白質を保存しようとする作用効果のことをprotein sparing effect(体タンパク異化抑制効果)と呼びます。



それでは緩やかなカロリー欠損の場合はどうだろう?

このカロリーレベルで脂肪減少/筋肉減少の比較を行った研究は殆どないが、Young CM et al.による初期の研究では、1800kcalの食事を9週間割り当てた結果は下表の通りで、炭水化物が減少するにつれて、脂肪の減少が大きくなり、LBMの減少が少なくなる傾向が示されている。しかし、中程度炭水化物グループの被験者3は、低炭水化物グループの被験者3よりも筋肉の減少が少ない。

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最近の2つの研究では、1200kcalの高炭水化物または低炭水化物食が割り当てられたが、体重と脂肪の減少に有意な群間差は認められていない。

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極端なカロリー欠損および緩やかなカロリー欠損での食事に関する研究になぜ相違があるのだろうか?


この問題はややこしい。カロリー欠損が大きければ大きいほど脂肪減少は大きいように思えるが、タンパク質の摂取が十分であっても、特にDiet開始後の数週間にはこのような稀なケースが見られる。その理由は不明だが、ダイエットや運動の変化に対する生理学的反応を超えて特定のカロリー閾値があるのではないかと推測する。

第22章で述べたように、エクササイズは緩やかなカロリー欠損で脂肪の減少を高め、筋肉の減少を抑えるのに最も大きなインパクトを与える。カロリーが一定のレベルを下回ると、概してエクササイズが有する有意な効果は停止する。また、カロリーレベルが一定レベルを下回ると、特に最初の数週間において食事に関係なく筋肉量が増加することがある。つまり、完全には解明されていないが、われわれの体は蛋白質を失うことなく分解することができる脂肪量は限られているようだ。従って、この著書では緩やかなカロリー制限でエクササイズを行うことを推奨している。

最後に、脂肪の減少は消費量>摂取量によって可能です。高炭水化物食でカロリー制限を実行するのが不得手の人にとっては、炭水化物を減らして脂肪の摂取を増やすことで満腹感が増し、容易にカロリーコントロールが出来るようになるでしょう。

“The Ketogenic Diet” by Lyle McDonaldから抜粋しました。
著作権/翻訳権の侵害の問題もあるので、掲題に関する彼の考え方の一部をメモ形式でポイントのみ紹介しています。詳しくは彼の著書を購読してください。
尚、原文では数多く研究論文が引用されていますが、ここでは敢えて割愛します。

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第1000回 糖質制限+筋トレで筋量を維持して体脂肪を減少させる?


追記:2017/5/3


ケトン産生食後のカーボローディング(Refeeding)について

Lyle曰く:
炭水化物をrefeedするとインスリン抵抗性が高まる。この状態は「アロキサン」または「飢餓糖尿病」と呼ばれ、2型糖尿病患者に見られる血糖値の変動や高インスリン血症に類似している。これは脂肪および炭水化物の燃焼に関与する酵素レベルの変化によってもたらされる。
炭水化物を長く制限すると、炭水化物の燃焼に関与する酵素のダウンレギュレーションを引き起こす。更に、血中の遊離脂肪酸が増えるとグルコース輸送を損なう。これら変化は肝臓および筋肉の両方で起こる。
カーボローディングで酵素レベルはアップレギュレートするが、肝臓で約5時間、筋肉組織では24〜48時間を要す。筋肉では炭水化物の酸化が減少するが、同時にグリコーゲン貯蔵が増加する。肝臓グリコーゲンの補充は最初に行われない。つまり、グルコースは先ずは筋グリコーゲン再合成(特に筋肉グリコーゲン貯蔵が枯渇している場合)のために血流中に放出され、肝グリコーゲンの補充は後になる。実際に、炭水化物refeeding中または数日間に、低血糖が回復したとの報告が数多く見られる。“ケトン産生食が脂肪細胞を何らかの形で変化させ、ケトン生成が終了したときに脂肪貯蔵の可能性を高める”と一般的には考えれているようだが、臨床的な実経験が示すようにケトンが脂肪細胞のインスリン応答を変えるとは思えない。ケトン産生食を止めた時、特に身体活動レベルが同じであれば、体脂肪レベルの維持に概して問題は認められていない。







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