第535回 果てしなき減塩論争


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米国農務省(USDA)およびアメリカ保健社会福祉省(HHS)は、成人のナトリウム摂取量を1日当たり2,300mg(食塩5.84g)、但し年齢51歳以上で高血圧、糖尿病、慢性腎臓病を有するサブグループの人たちは1,500mg(食塩3.81g)とするよう推奨しています。
米国心臓協会(AHA)は、基本的に米国農務省(USDA)/アメリカ保健社会福祉省(HHS)の考え方を支持していますが、成人/子供を問わず全国民に対し1,500mgとするよう推奨しています。
他方、米国医学研究所(IOM)は2,300mg以下にすることに反対の意を表明しています。

このような状況下で疾病管理予防センター(CDC)は、低ナトリウムの食事が健康に有害であるというエビデンスが漸増している事実を鑑み、米国医学研究所(IOM)に事実関係を調査するように指示を出しました。
その結果は次の通りで、米国での減塩論争に再び火ぶたが切られることになりました。

American Journal of Hypertension
2013 October
“The Salt Discourse in 2013”

1.ナトリウムの高摂取と心血管疾患には正の関連性があることをエビデンスが示している。
2.ナトリウム摂取を一般に1,500mg/日に引き下げるよう促す取り組みに関する健康評価のエビデンスには一貫性が無い。
3.一般人とサブグループに分けることを支持する健康評価に関するエビデンスは存在しない。

マイコメント
米国における現状のナトリウム摂取量は3,400mg(食塩8.64g)となっています。
世界保健機関(WHO))は、世界的にナトリウム摂取量を2025年までに2,000mg (食塩5g)未満とするよう推奨しています。
われわれ日本人の食塩摂取量は、塩漬保存法や醤油・味噌・漬物中心の食文化の中で、約4,331mg(食塩11g)と先進国の中でも非常に高くなっており、厚生労働省は2010年4月に「日本人の食事摂取基準」を5年ぶりに改訂し、食塩相当量の摂取目標値は、成人男性3,937mg(食塩10g)未満から3,543mg(食塩9g)未満に、成人女性3,150mg(食塩8g)未満から2,953mg(食塩7.5g)未満へと低減しました。
お隣の韓国では保健福祉部が2010年に行なった調査によると4,878mg(食塩12.4g)で、世界保健機構(WHO)の推奨値の2.4倍と極端に多いことが判明しています。
外食産業や加工食品がますます拡販化している中で、社会構造や食品業界の基本方針/販売戦略そのものにメスを入れずに、1,500mg/2,300mgという低数値のみを論議しても、蓋し絵に描いた餅ではないかと云っても過言ではないでしょう。

註:ナトリウム(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)

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第454回の米国での減塩論争

アップデート 2013年10月9日
日本高血圧学会の減塩委員会は、 減塩食品一覧表 52品目を公表しました。今後共リストの拡充を図るべく、10月26日に開催予定の「減塩サミット in Osaka 2013」で掲載製品募集の説明会を開きます。同委員会では、日本国内で減塩食品の開発・販売に取り組んでいる企業の参加を募っているそうです。

アップデート2013年10月23日
カナダ高血圧学会は10月17日、高血圧教育プログラム(CHEP)で推奨しているナトリウム摂取制限の上限値を現行の14~50歳1,500mg(食塩3.81g)、51~70歳1,300mg(食塩3.30mg)、70歳以上1,200mg(食塩3.05mg)から2,300mg(食塩5.84mg)に緩和すると発表しました。正式認可されれば2014年1月から運用されます。
因みに、現状では摂取量は上限を超えて平均3,400mg(食塩8.64g)となっています。