第561回 腹部・ヒップ・大腿部の肥満を徹底解明 Part4


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脂肪組織の内分泌機能における性差
脂肪組織は総称してアディポカインと呼ばれる多数の産物を分泌します。その中で主要なアディポカインは、 レプチンとアディポネクチンの二つです。

複数の研究で、BMI値の違いや体脂肪量を調整した後でも、男性に比べて女性は循環レプチン濃度が高いこと知られています。そしてこの知見は、ex vivoでの脂肪組織培養において複製されています。興味深いことに、レプチンにおける性差は思春期に高まりますが、子供や新生児においても明らかになっています。
閉経後にプチン濃度が下降しないのは、女性の体脂肪に相関する高レベルのレプチンは単に性ホルモンによるものではないことを示しています(閉経後の女性は閉経前の女性より脂肪のキロ当たりレプチンは少し低いですが、男性に比べると依然として高い)。
脂肪量が多いと男女ともにアディポネクチンは低レベルなのですが、脂肪量が多いにも拘わらず高濃度の循環アディポネクチンも女性で見られます。
アディポカイン産生でのこのような性差には、二重の意味があります。
男女間の脂肪細胞における固有の差異、或いは、例えばレプチンとアディポネクチン産生に及ぼすアンドロゲンの抑制効果といったホルモンによる差動調整を示唆しています。
さらに重要なことは、それらはまた直接的/必然的に男女間で見られる全身のインスリン感受性や代謝の違いに関連するかもしれません。

性ステロイドはデポ固有の脂肪組織の代謝および内分泌機能に影響を与える
それは、多嚢胞性卵巣症候群の女性や性ホルモンが脂肪組織の複数の効果を持っている性同一性障害の人々で、思春期や閉経期に起こる変化からも明らかです。
関連のメカニズムは、依然としてはっきりしないままです。
人間の脂肪細胞は前駆脂肪細胞と同様に、性ステロイド受容体を発現します。
エストロゲンとアンドロゲンは、カテコールアミンへの脂肪分解反応を低鈍、つまり少なくとも部分的にアドレナリン受容体発現の変化を介して調節される効果を弱らせ、また、LPLの発現と活性を抑制します。アンドロゲンはまた、グルコース取り込みを増加させることが示されています。
性ステロイドはレプチン分泌に正反対の影響を有しています。即ち、エストロゲンはレプチン分泌を誘発し、Eアンドロゲンはレプチン分泌を阻害しますが、これは男性よりも女性の脂肪細胞で多く見られます。
性ステロイドは、脂肪細胞への直接的影響と言うよりは、主に中枢神経系へのバイオロジー効果を介して脂肪細胞に影響と思われます。例えば、動物モデルで、例えば、動物モデルにおいては、腹内側視床下部核のステロイド合成因子-1ニューロンに対するエストロゲンの効果は、褐色脂肪組織の熱発生を高め、特に内臓脂肪組織の蓄積を制限します。

性ステロイドは、デポ特定の方法で脂肪組織の成長を調整するかもしれない
脂肪組織は、既存の脂肪細胞の拡大や前駆細胞の動員を介して膨張拡大します。
脂肪分布における性差は、脂肪細胞のサイズと数の両方に関与します:女性の臀部・太ももの脂肪細胞は男性よりも大きいですが、腹部の脂肪細胞は男女間で等しく、女性の内臓脂肪細胞はより小さいです。それにもかかわらず、男性に比べて肥満女性の皮下デポが拡大する主な要因は、細胞の数が多い事にあります。
さらに最近では、より正確な画像処理技術で、女性の太ももの脂肪蓄積は脂肪細胞数の増加(過形成)、男性の場合は脂肪細胞サイズの増大(肥大)に関連していることが示されました。腹部の脂肪蓄積は男女ともに脂肪細胞のサイズ肥大に起因しますが、女性は痩せた状態でも脂肪細胞数が多いことから、より大きな脂肪量を貯蔵することが出来ます。
過形成で増大するデポ容量の違いについては、げっ歯類での研究はあるものの、人間については殆ど明らかになっていません。限られたデータではありますが、女性の皮下脂肪、特に太ももデポでは、男性に比べて早期に分化した脂肪細胞の割合が高くなっています。
興味深いことに、同じ個体から単離された脂肪細胞のin vitroでの増殖と分化は男女間で等しく、細胞の違いと云うより局所的な微小環境が女性の脂質生成を促進することを示唆しています。
in vitroでは、エストロゲンは人間の前駆脂肪細胞の増殖を刺激しますが、アンドロゲンは増殖に影響することなく分化を阻害します。
しかし、特定のデポが、性ホルモン効果やこれらのホルモンに反応する潜在的な性差へ異なる感受性を示すどうかは、全身的に検討されることでしょう。

脂肪組織における性差のシステム生物学
雄雌マウスの内臓脂肪組織(不特定)で異なる遺伝子ネットワークの包括的な分析が、各性別で同定される遺伝子ネットワークが異なる経路に影響を与え、代謝および肥満形質と異なる関連付けを持っていることを明らかに示しています。
人間での最近の研究では、腹部と臀部の脂肪組織での性差mRNAの存在と調整遺伝子miRNAの発現を示しており、これは間違いなく新しいメカニズムの洞察を生み出すでしょう。

結論
脂肪表現型における性差は、遺伝子、エピジェネティック(後成遺伝子)、及びホルモン要因の複雑な相互作用によって決定されると考えられます。脂肪組織の代謝におけるデポと性差のin vivo試験で、「脂質取り込みと動員」がメインメディエーターではないことが明らかになり、同時に、さらなる調査のために新たな経路(直接FFAの取り込み)が指摘されたことが示されました。
女性の脂肪細胞の機能における性差は、主に遺伝子なのか、それとも性染色体に関連orステロイドによる重要な初期プリンティングイベントから派生する細胞自律的な性質から由来すのかは明らかになっていません。
脂肪細胞機能に及ぼす性ホルモンの直接的な効果と成長への特定の脂肪デポの微小環境の重要性はよくわかっていないままです。
エピジェネティックな変化も然り、グローバルな遺伝子とmiRNA発現の研究から生じたすべてのデータを統合し、なぜ女性は有害な代謝影響を受けずに男性よりも脂肪組織を蓄積することができるのか、そして特に臀部・ふとももの脂肪組織がどのようにして代謝リスクを減らすのか、その理由を理解する為には、もっと多くの作業が必要とされます。

参照記事
Biology of Sex Differences
Sex differences in human adipose tissues – the biology of pear shape


Beware of Belly Fat(2012.6.20)by 米国ミシガン大学

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