第597回 ビタミンD剤は疾患予防の効果なし


ニュージーランドAuckland大学のDr Mark Bollandらは、『40件のRCT解析の結果、ビタミンDサプリには、健康な一般住民の心疾患、脳卒中、癌、骨折など健康障害のリスクを有意に低減させる利点は無い』との研究結果を、英医学専門誌The Lancet(2014年1月24日付け)に発表しました。

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The Lancet
24 January 2014
“The effect of vitamin D supplementation on skeletal, vascular, or cancer outcomes: a trial sequential meta-analysis”

背景:
ビタミンD不足は多くの健康障害と関連があると考えられ、その結果としてサプリが広く普及しているが、一部の研究はビタミンDの効果を調べるために更なる臨床試験が必要であることを示唆している。

方法:
ビタミンDサプリメント(with or without カルシウム)についての既存の無作為化比較対照試験の系列メタ解析を行った。
死亡5%以上およびその他のエンドポイントについては15%以上のリスク軽減が出来るかどうか、ビタミンDサプリメントの心筋梗塞 or 虚血性心疾患、脳卒中 or 脳血管疾患、癌、総骨折、股関節骨折、および死亡率に及ぼす影響を治験系列解析で推定した。

知見:
心筋梗塞 or 虚血性心疾患( 9件の試験48 647人)、脳卒中 or 脳血管疾患( 8件の試験46 431人)、癌(7件の試験48167人)、総骨折( 22件の試験76497人)に対するビタミンDサプリメント(with or without カルシウム)の予測効果は無益閾値内であり、ビタミンDサプリメントはこれらエンドポイントの相対リスクを変更しないことを示している。
ビタミンDサプリメントだけでは、15 %以上(12件の試験27834人)で股関節骨折は減少しなかった。
カルシウム配合のビタミンDはナーシングホームなど施設収容の人たち(2件の試験3853人)の股関節骨折リスクを15%以上変更したが、一般地域住民(7件の試験46237人)では認められなかった。ビタミンDサプリメント(with or without カルシウム)が死亡リスク(38件の試験81173人)を低減させるかどうかは定かではない。

解釈:
我々の調査結果は、ビタミンDサプリメント(with or without カルシウム)が一般住民の骨格筋やその他のリスク評価項目を15%以上減少させないことを示唆している。今後の研究が同様のデザインでなされるなら結果が覆ることはないであろう。

マイコメント
この新研究で、「ビタミンDは健康状態の不良の結果不足するのであって、ビタミンDが足りないから不健康になるわけではないという見解が裏付けられた」との報道もありますが、これでビタミンD論議に終止符が打たれた訳ではありません。

反対の声として次のようなコメントもあります:

この研究には“転倒”が考慮されていない。
U.S. Preventive Services Task Force(米国予防医療サービス専門作業部会)は「ビタミンDサプリは高齢者の転倒予防の一助となると云うエビデンスがある」と指摘しています。

ビタミンDのリサーチで知られるBoston Medical CenterのMichael F. Holick氏は、『今回の対象となっている研究の多くはビタミンD用量が非常に低く(200~400IU)、この解析には欠陥がある。Institute of Medicine(米国医学研究所)は成人では1日600~800IUは必要だと言っている。米国では高用量2000IUの大規模な研究が現在進行中である』とコメントしています。


<アップデート:2014年3月14日>
Menopause
March3 2014
“Calcium/vitamin D supplementation, serum 25-hydroxyvitamin D concentrations, and cholesterol profiles in the Women's Health Initiative calcium/vitamin D randomized trial”

米国心臓、肺、血液研究所(NHLBI)による Women's Health Initiative研究
被験者は閉経女性
二重盲検、無作為化対照試験
“1日当たりカルシウム1000mg+ビタミンD 400IU” のカルシウム・ビタミンDサプリメント(CaD)を割り当てた。

2年後、
対照群と比べてCaD群の血漿25OHD3濃度は38%高まった(95%信頼区間, 1.29-1.47, P < 0.001):
・CaD群:24.3 ng/mL
・対照群:18.2 ng/mL
更に、CaD群ではLDL-Cが平均4.46-mg/dL減少(P=0.03)、HDL-Cは増加(P=0.003)、
中性脂肪は低減した(P<0.001)


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第545回のビタミンDサプリの骨密度への効能??


アップデート 2014年4月24日

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The Lancet Diabetes & Endocrinology
24 April 2014
Vitamin D supplementation and falls: a trial sequential meta-analysis

ビタミンD剤は転倒予防に有意な効果なし

背景:
これまでの実験やシステマティックレビューによるメタ解析の結果に相反して、ビタミンDサプリメントが転倒予防に推奨されているケースが散見される。そこで我々は更なる研究の必要性があるのかどうか調べることにした。

結果及び結論:
29,535名を対象とした既存の20件のランダム化比較試験では、
ビタミンD剤の効果予測は、カルシウムが含まれているかどうかに関らず、無益境界の範囲内であり、15%以上の相対リスク軽減につながらないことを示した。
リスク軽減の閾値を10%とした感応度分析でも、効果予測は無益境界の範囲内であった。
リスク軽減の閾値を15%としたサブグループ分析でも、ビタミンDサプリ単体(16件の研究、対象者22,291名)およびビタミンD剤+カルシウム(6件の研究、対象者9,919名)の実験で無益境界の範囲内であった。

プール分析では、ビタミンDサプリは、カルシウムを含む或いは含まないに関らず、転倒リスクを 15パーセント以上軽減することはない。同じようなデザインで更なる試験を行っても、これらの結論が変わる可能性は低い。現在では、転倒の予防策としてビタミンDサプリメントを処方する正当性は殆ど見当たらない。