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zoom RSS 第685回 ダイエット vs 科学的根拠(統計学)

<<   作成日時 : 2014/06/05 06:35   >>

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社内会議など議論で意思決定を大きくリードするのは、「論理的思考」や「弁舌の才」と言っても過言ではないでしょう。
医療の世界に於いては、かつては弁の達者な医学会の権威者の主張や生物学的ロジックに対して反論の余地がありませんでしたが、現代の医療はEBM(Evidence Based Medicine)と呼ばれ、エビデンスに基づいた医療が最重要視されています。エビデンスとは科学的根拠のことであり、統計学的な実証研究が最も大きな比重を占めています。
ダイエット&フィットネスの分野では、エビデンスが主流の座を占めてはいるものの、依然として都市伝説や “Broscience” が底流に根強く蔓延っています。


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サイコロに雌雄があることをご存知ですか?
メスは「天一地六東五西二南三北四」、オスは「北三」にしたものです。
それぞれ1・2・3の面を頂点にして1→2→3の順に見たときに、時計回りになるのが雄サイコロで、反時計回りになるのが雌サイコロです。
どちらも表裏の和は7であり、精密なサイコロは角の丸み部分だけでなく、正六面体に彫った目の体積の合計がどの面も同じになるように作られるそうです。
このように原理的にどの面も出る確率が限りなく等しくなるように工夫されています。

扨て、サイコロを6回振って1の目が3回でたとします。
この結果は事実です。
しかし、この結果を以って「サイコロを振ると1/2の確率で1の目が出る」と言われても、これがウソ(虚構)であることに我々は直ぐに気づきます。
何故なら、原理原則論的あるいは実証的に1の目が出る確率が限りなく1/6に近いことを知っているからです。

一方、「6人が糖質制限ダイエットにトライした結果、3人に減量効果が認められた。糖質制限は最強のダイエットゆえに、皆さんも是非とも行うべきである」と言われると、サイコロと同じような性質のウソであるにも拘らず、われわれはツイツイ信じてしまいます。

おまけに、
カロリー計算なんて必要ありません!
糖質さえ食べなければ、好きなものをお腹いっぱい食べても楽々痩せます!
糖質を食べるとインスリンという肥満ホルモンが分泌されるから太るんです!
炭水化物は毒物です!
炭水化物は人類を滅ぼす!
これだけセンセーショナルな大うそを追加的に並び立てられたら、簡単で短期間に而も安全に痩せられる方法があればそれが一番ですから、誰だって口車に乗ってしまうことでしょう。

おっと横道に入りました。
今回のメインテーマは糖質制限ではありません。
話を本筋に戻しましょう。

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それでは、
科学の世界に於いて、ある「命題」を立証するにはどうすれば良いのでしょうか?

研究者がある事実を証明する為に調査または実験を行い、そのデータを収集して仮説を立てます。これを「対立仮説」と位置付けます。
次に、経験的理論的な見地から、この仮説を否定する「帰無仮説」が設定されます。
仮説検定の対象となるのは帰無仮説で、棄却されれば対立仮説が支持され、研究者の調査・実験の意図が達せられることになります。

例えば「黒いカラスが存在する」という特称命題は、黒いカラスを一匹見つければ証明できますが、「すべてのカラスは黒い」という全称命題を実証するためには、この世のすべてのカラスを観察して、全部が黒いことを示さなければならないので、事実上は不可能です。
従って、これを反証するためには、白いカラスを一匹見つけるだけで良いとされているのです。

因みに、
これはヤフー知恵袋で頻繁に見受けられることですが、糖質制限狂信者と呼ばれる人たちは論理的にコーナーに追い詰められると、”糖質制限ダイエットが安全でない証拠を示せ(=黄色いカラスはいないことを証明せよ)”と反駁しています。このように、「あなたが先に『ない』ことを証明せよ、さもなくば“ある”のだ」と主張する詭弁を未知論証(消滅的証拠)と呼びます。糖質制限ダイエットが安全であることを実証しなければならないのです。

しかし、「糖質制限が安全で効果的なダイエットである事は自ら体験済みである。やってみればわかることに理屈はいらない」と、上述したサイコロのウソを繰り返すだけで、論理的な説明や根拠を示さない。まるで下町の拝み屋の婆さんと科学論議を見ているようで歯車が全く噛み合っていません。そして最後にはヒステリックに罵詈雑言を吐いて噛みつく。
これでは有識者(優良回答者)も呆れて果てて、やがてヤフー知恵袋から去って行ってしまいます。

具体的に言うと、糖尿病に関しては「米国糖尿病学会の直近の公式声明」などを、健康な個人また集団を対象とする健康の保持・増進や生活習慣病の予防ためのダイエットに関しては「厚生労働省・日本人の食事摂取基準」をそれぞれ帰無仮説と見立てて、糖質制限ダイエットの安全性と有効性についての絶対的優位性を実証して見せてください。

P値
帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択する時の基準を有意確率と称してP値で表示されます。
通常は5%か1%が用いられます。つまり、p<0.05とあれば、仮説を立てた場合に、帰無仮説が起こる確率が5%未満であることを意味し、極めて稀なこということで、帰無仮説を棄却して対立仮説が正しいと判定するのです。

しかし、有意確率は限りなく0に近づくことはできても、決して0にはなりません。
コインを千回投げて千回表が出ても、次に0が出る確率は0ではなく、やはり二分の一なのです。このように統計的な仮説検定法は完全な方法ではなく、有意確率5%で検定を行うということは、“同様の調査・検定を行うと20回に1回は結論が誤っている”ことを意味します・・・蛭川 立氏

前述した精巧なサイコロを振動や風が起きないように管理し、同じ持ち方で同じように振れば理論的には同じ結果が出るはずですが、現実問題として人間が実際に行うには無理があります・・・金谷健一氏

加えて、統計は研究者の意図に大きく影響されます。つまり、解析方法、データの扱い方、その他の条件設定を操作することによって結果は変わります。そこに研究者の下心がどれほど入っているのかについては、論文から正確に読み取ることは非常に難しい。

このように統計にはウソが混ざっていると言う理由で、科学的エビデンス否定する人たちが散見されますが、彼らはニヒリスト以外の何者でもありません。統計とは推定であり普遍性の追求なのです。換言すると、科学(統計)とはウソが混ざっていることを承知した上で、うまく活用することこそが本来の使い方なのです。

それでは嘘だとわかっていることをなぜ研究するのであろうか。それはこの現実世界を簡単な手段で近似するためである。まず仮想世界ではどうなるかを計算し、次にそれを現実世界に対応させる。完全に対応させることはできないが、それが有益かどうかはその問題とその目的とによる。そういう意味で確率統計は創作科学と言える・・・金谷健一氏

統計は「信じる」ものでは無く活用するものです。「信じる」ものではないからこそ、その情報にどれくらいウソが混じっているかを積極的に疑います。そして「ウソが混じっているから信用しない」とするのではなく、「このくらいウソがありそうだと踏んだ上でうまく利用する」ことこそが統計の正しい使い方でもあるのです・・・尾藤誠司氏

「絶対的に正しいこと」を扱うのならば論理学や数学に任せればよいが、そんなものは理論的な世界の中にしか存在しない。そして「少しでも絶対的ではないこと」について言及しようと思えば、現状、統計学以外に記述したり議論したりする方法が人類にはない。統計学は「不確かな現実」に判断を下すためにある・・・西内 啓氏

エビデンスのヒエラルキー
エビデンスは横並びではなくピラミッド型の階層となっています。
下表が示す通り、「系統的レビューとメタアナリシスによる研究」を頂点として、「専門家の意見」は「基礎実験」と並んで最下層に位置付けられています。

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応用生理学の研究分野は裾野が広く、研究課題は多岐にわたっています。
例えば食前食後の運動に関する研究では、健康管理/ウェイトマネジメント/運動パフォーマンス/筋タンパク代謝/脂肪減少/EPOC/EPEE/空腹感/神経系シグナリングなど様々なテーマが交絡し、研究方法や条件設定の違い、更には有意性(<0.05)を立証しようとする研究者の思惑も加わり、多くのごっちゃ混ぜ理論が生まれます。
結論の異なる研究論文を流し読みするだけは訳が分からなくなってしまいます。
そういう意味で、システマティックレビューメタ解析がヒエラルキーの最上位にある理由が頷けます。
皆さんもシステマティックレビューもどきで良いのでおやりになると、今まで見えてなかったものが見えてくるでしょう。ブログの冒頭で、「個別記事だけで最終判断せず、体系的に理解するようにしてください」と述べたのもまさしくこういうことを意味します。
インスリン抵抗性における血糖コントロール(新戦略HIITウォーキング)の末尾に複数の関連記事を示しましたので Please do try!

因みに、世界最大と言われる米国スポーツ医学会の第61回年次集会が、2014年5月27日〜31日にフロリダで開催されました。Full Abstracts付きでプログラムが公開されていますので、直近の情報を徹底フォローしておられる上級者の方はご参考になさってください。
こちら↓です。
“Full Abstracts Available Electronically”


情報の賞味期限
研究論文の有用性にも経時的限界があるようだ!
例えば、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)ガイドラインについて、1998年〜2007年に公開/2006年〜2013年に改訂された“処置と治療に関する推奨(class1)”解析結果が2014年5月28日付けでJAMAに掲載されました。その内容は次の通りです。
トータル推奨インデックス619件の内、引続き適用されたガイドラインは495 (80.0%; 95%信頼区間76.6%-83.1%)、ダウングレード又は逆転したのは57(9.2%; 95%信頼区間7.0%-11.8%)、削除されたのは67 (10.8%; 95%信頼区間8.4%-13.3%)だった。
エビデンスレベルの推奨で維持継続されたのは、複数の無作為化試験でサポートされたものが90.5%(95%信頼区間83.2%-95.3%)、1件の無作為化試験又は観察研究でサポートされたものは81.0%(95%信頼区間74.8%-86.3%)、意見によるものは73.7% (95%信頼区間65.8%-80.5%)・・・P=0.001
複数の無作為化研究でサポートされていないガイドライン推奨では、ダウングレード、逆転および削除は一般的となっています。

医師の書いたダイエット本はエビデンスではない!

今もヤフー知恵袋では、糖質制限狂徒が『江部康二先生の「糖質オフ!健康法」という本が617円で売ってるから読んでください』と執拗に叫び続けています。
医師の書くダイエット本がまるで教典の如く扱われていますが大きな誤解です。

最近では糖質制限による不調を訴える声もチラホラ上がっています。
当の江部医師はブログで次のような主旨の弁明をしています。
・ブログ読者の皆さんの質問への私の回答は、あくまでも一般論としての参考意見である。
・ブログ記事や本に関しても同様に、糖質制限食に関する一般論としての参考意見である。
・読者が私の参考意見を読んで、どのように利用するかは読者の自己責任である。

そもそも医師法では、“医師は患者を診察せずに診断を行い、治療や投薬等に関する方針を決めてはいけない” と定められています。
今さら何なんでしょう!
サナダ虫ダイエットで知られる藤田教授が、健康食品「プロポリス」の販売幇助で書類送検されましたが、江部医師もTV出演で微妙な発言をしてダイエット本で大儲けしているだけに、保身のための窮余の一策ですかね!
それにしても、「未必の故意」あるいは「認識ある過失」の責を追及されればヤバいのでは・・・!?

最後に、
当初書こうと考えていた内容から、たびたび脱線してしまいました。
故に取り留めにない記事になりました。

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