第910回 停滞期:筋肉は脂肪よりも重いからですか?


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Q:
33歳の♀です。お米など主食を減らすダイエットを開始して、しばらくは順調に体重が落ちました。しかし、約一ヶ月が経った現在、カロリー制限と運動をしっかり続けているにも拘わらず、減少が止まってしまいました。
筋肉は脂肪よりも重いと云われていますが、体脂肪が落ちた分だけ筋肉が付いてしまったのでしょうか?
飢餓モード/停滞期に突入してしまったからでしょうか?

A:
先ず、筋肉は体脂肪よりも重いって話は真っ赤なウソです。
筋肉1kg=体脂肪1kgです。

質量とは物体がもともと持っている量で、新たに生まれてくることもなければ、消滅することもありません。その物体が温度や圧力の高低、空気中/真空中/水中の違いによらず、どこにあっても質量は不変です。因みに、地球と物体との間に生じる引力を重力と言いますが、重量とは重力の大きさを指します。

但し、
密度とは単位体積あたりの質量を指しますが、筋肉と体脂肪の密度は異なります。
密度が違うということは、同じ体重/身長であっても筋肉質の人の方がほっそり見えるということです。
それでは、どれくらい大きさが違ってくるのでしょうか?
脂肪の体積は水の1.1倍です。
筋肉の体積は水の0.9倍です。 
従って、体積比は 1.1(脂肪)÷ 0.9(筋肉)= 1.22となります。 
つまり筋肉と脂肪を比べると、脂肪は筋肉よりも見かけ上は20%ほど多く見えることになります。

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次に、ダイエット中のカロリー欠損での筋量アップは、「非常に太った人」、「全く筋トレ経験のない人」、「筋トレを中断して筋力や筋肉量が少なくなっても、トレーニングを再開すると以前の筋力・筋肉量まで比較的早く戻せるマッスルメモリー」、或いは「ドラッグの使用」といったケースでは限定的/一過性的に起こり得ても、決して一般的には起こるものではありません・・・第504回 カロリー欠損でも筋量アップする??

しかし、正しいやり方、つまり、タンパク質を十分に摂取し、適切な高強度ウェイトトレーニングやダイエットブレークを行い、有酸素運動に夢中にならない限り、筋肉の減少は全体的に最少で抑えられることははっきりしています。

エネルギー収支バランスをプラスにして、上記の正しいやり方で筋量アップを目指しても、思ったように筋肉は増えないものです。特に女性の場合は男性の半分です・・・第456回 筋肉はどれ位サイズアップするのか?

というか、そもそも筋肉を1kg増やしても代謝量は約13kcalしかアップしません・・・ “第745回 筋肉と代謝量についての都市伝説” "第51回 筋トレと有酸素運動どっちが先?“


停滞期(plateau)

減量があるレベルまで進むと行き詰まり、一ヶ月以上の長期間に亘って横ばいとなる状態をplateau(停滞期)と呼んでおり、これには二つの可能性が考えられます。一つはダイエットプログラムに遵守できていないこと、もう一つはエネルギー収支バランスが消費量=摂取量の維持レベルに達しているのではないかということです。この傾向は、ダイエット期間が長期に亘るとき、或いは、目標が非常に大きい時に生じやすいことが指摘されています。
プログラムへの遵守性に関し、頻繁に見受けられるのは摂取カロリーと消費カロリーが正しく把握できていなことが一番に挙げられます。研究群が示しているように、自己報告ベースでは、摂取カロリーは平均47%が過小報告で、身体活動は51%が過大報告されており、男性より女性の方が、而も肥満者の方が過小報告の割合が高くなっています。

Mr Alan Aragonは、Alan Aragon’s Research Review (AARR)の “What causes weight loss plateaus and how can they be overcome?” で、plateausをブレイクするには、これまでのダイエットプログラムをレビューし、どうやってカロリー欠損をつくりだすか計画を立て直すことである。選択肢としては、(1)摂取カロリーを低く抑える、(2)消費カロリーを高める、(3)両方を行うかのいずれかである。あえて4つ目の選択肢をあげると、plateausは最終ゴールに向かっての正当な維持プロセスと位置付けて、暫し休息することも一計であろうと述べています。


最後に一つ注意を喚起しておきたいポイントがあります。
それは水分です!
Plateauを「体重の減少」と「体脂肪の減少」をごっちゃ混ぜにして誤解をしている人が非常に大勢いらっしゃる。

体重を構成する要素としては、脂肪/筋肉/グリコーゲン/水分/骨/消化器官内の内容物(含うんち)臓器/血液/などが挙げられますが、その中で人体の水分量は男性で約60%(54~70%)/女性では約50%(45~60%)と非常に大きな比率を占めています。

人体は水分の浸透圧が一定になるように調節されています。脂肪は水に溶けませんが、糖は容易に溶ける(1gのグリコーゲンは3gの水と結合する)ので、炭水化物の制限やカットにより、大量の水分が排泄されて、一次的に体重が減少します。一定期間が過ぎれば体重がそれ以上に減らなくなる理由のひとつで、食事を標準に戻すと水分も元に戻り、体内ではこのサイクルを繰り返します。
摂取カロリーを極端に減らし、短期間で急激に痩せるCrash Diet(クラッシュダイエット)クラッシュダイエットによる大幅な体重減少も大部分は水分の減少によるものです。
多量の発汗や塩分カットで、体の塩分が不足したりすると、同じ原理で水分が減少します。
生理中には体内に水分を貯め込む作用が働きます
過激な食事制限に加えて、無理な運動をしてコルチゾルホルモンが慢性的に高まると、体内に水分を貯め込む作用が働きます

あなたのダイエットの本当の目的は、脂肪を減らすことであって、一時的に水分を減らすことでは無いでしょう。
水分の一時的な増減に一喜一憂しないでください!

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