第920回 インスリンの新たな役割・・・脳内ドーパミンを高める


インスリンが血糖値のコントロールや食後の満腹感をもたらすホルモンであることは御貴承の通りですが、『脳の報酬系と快楽中枢を制御する神経伝達物質であるドーパミン分泌にも、従来考えられていた以上に強く関っている』ことが、ニューヨーク大学 Langone 医療センターの新たな研究で明らかになりました。研究チームによると、脳内のインスリンレベルが高まると、ドーパミン再取り込みの引き金になるだけでなく、ドーパミン分泌が高まること(20~55%)、更に、インスリンへの感受性は低カロリー食では通常食に比べて10倍高く、逆に高カロリー食では感受性は失われたそうです・・・Science Daily Oct27 2015

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論文の内容骨子は非常に難解ですが次の通りです。

Nature Communications
27 October 2015
Insulin enhances striatal dopamine release by activating cholinergic interneurons and thereby signals reward

論文タイトル:
インスリンは、アセチルコリン作動性抑制性細胞および報酬系シグナルを活性化することによって線条体ドーパミン分泌を高める。

アブストラクト:
インスリンは、視床下部のインスリン受容体を活性化し食後の満腹感を伝達する。しかし、肥満の発症率が高まると結果的にインスリンレベルは慢性的に昂進するが、このことはインスリンがモチベーションと報酬を統制する脳中枢にも作用する可能性を示唆している。
本論文では、インスリンがインスリン受容体を発現する線条体のアセチルコリン作動性抑制性細胞(cholinergic interneuron)に関連する間接的なメカニズムを介して、側坐核と尾状核被殻で活動電位依存性ドーパミン(action potential-dependent dopamine:DA)分泌を増幅し得ることを述べている。更に、ラットに“食事制限”もしくは“肥満を引き起こす高カロリーの食事”を長期的に与えた処、インスリンに対する線条体DAの感受性はそれぞれ対向的な変化を示した・・・つまり、食事制限では応答性が高まり、高カロリー食では応答性が喪失した。側坐核シェル中のインスリンレベルを正常にすることは、グルコース溶液の味に対する嗜好を取得するために必要であることを行動研究は示している。同時に、これらのデータは線条体のインスリンシグナル伝達がDA分泌を高めて食品の選択肢に影響することを示唆している。