第933回 インスリン抵抗性は脂質の置き換え効果を左右する


飽和脂肪酸の多い食事から一価不飽和脂肪や多価不飽和脂肪酸を含む食事への置き換えは、生活習慣病リスク軽減と関連すると言われていますが、これにはインスリン抵抗性の程度が決定因子として影響することがスペインCórdoba大学/Carlos III衛生研究所/Málaga大学/アイルランドCollege Dublin大学/ノルウェーOslo大学/スウェーデンUppsala大学/英国Reading大学らによる国際研究チームから報告されました。

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American Journal of Clinical Nutrition
First published Nov11 2015
Insulin resistance determines a differential response to changes in dietary fat modification on metabolic syndrome risk factors: the LIPGENE study

背景:
従来のデータは、飽和脂肪酸を減らすとインスリン抵抗性やその他の代謝リスク因子に有用であることを示しています。しかし、メタボリックシンドロームで苦しんでいる人たちのインスリン抵抗性の状態が、この反応に影響するかどうかは明確にされていません。

目的:
飽和脂肪酸の多い食事を等カロリーで脂質の質と量を変えた食事に置き換えると、メタボリックシンドロームのリスク因子に効果的であるが、インスリン抵抗性の進行程度がこの効果に影響するかどうかを決定することが本研究の目的である。

デザイン:
単盲検、並行、対照群、食事介入試験
HOMA-IR評価によってインスリン抵抗性レベル別に分類されたメタボリックシンドロームの患者472名(欧州8ヵ国)を、次の4種の食事群に無作為に割り付けた。
・HSFA食:飽和脂肪酸の多い食事
・HMUFA食:一価不飽和脂肪酸の多い食事
・LFHCC食:低脂肪食、高複合炭水化物食、長鎖n3多価不飽和脂肪酸サプリ1.2g/日
・対照群:低脂肪食、高複合炭水化物食、サプリ(プラセボ)12週間
身体計測、脂質、炎症、及びIRマーカーを測定した。

結果:
HOMA-IRが最も高いインスリン抵抗性のメタボリックシンドローム患者は、HMUFA食およびLFHCC+n3食を摂ると、インスリンおよびHOMA-IRレベルが低減し、インスリン抵抗性が改善した (P < 0.05)

対照的に、HOMA-IRが低い患者ほど、LFHCC食およびLFHCC+n–3食を摂るとBMIと腹囲が減少し、HMUFA食およびHSFA食を摂ると善玉HDLコレステロールが増えた。

HOMA-IRが低~中程度のメタボリックシンドローム患者では、LFHCC+n3食を摂ると血圧の減少/中性脂肪/悪玉LDLコレステロールレベルが減少し、HMUFA食およびHSFA食を摂るとアポリポタンパク質AI濃度が増加した。

結論:
より多くの代謝性合併症を有するインスリン抵抗性のメタボリックシンドローム患者は、食事性脂質を変えると特異的な反応を示し、「飽和脂肪酸の多い食事」から「一価不飽和脂肪の多い食事やLFHCC+n3食」への置き換えによる健康影響により敏感だった。逆に、インスリン抵抗性のないメタボリックシンドローム患者は、飽和脂肪酸の多い食事の有害な影響をより受けやすいかも知れない。
被験者の代謝表現型は明らかに脂質の摂取量と質がメタボリックシンドロームのリスク要因に及ぼす反応を決定する。このことは、ターゲット別/個別性を考慮した食事療法が、代謝機能を異にする人たちに有意義であることを示唆している。

<ご参考>

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