第1103回 ダイエット/リバウンドの真実 Part-1


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管理栄養士や自称ダイエット専門家の多くが、ダイエットに失敗する理由として次の4点を強調しています。

これらアドバイスのどこが間違いなのかあなたは分かりますか?

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はじめに

適応熱産生(adaptive thermogenesis=AT)とは、減量時と増量時に伴うエネルギー消費量の変化のことです。各アイテムの具体的な説明は、“第219回 基礎代謝とはこういうものなんですよ!” を参照していただきたいが、簡単に表にまとめると次の通りです。

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減量時のATには3つの考え方があります。

Mechanicalモデル
ATはない。エネルギー消費量は単に体を動かし小さくなることに直接反応する。

Threshold モデル
エネルギー消費量は減量によって減少するが、体脂肪の貯蔵がセットポイントつまり閾値に達するとMechanicalモデルとなる。

Spring モデル
エネルギー消費量は減量に伴い継続的に低減する。

Rosenbaum & Leibelによる研究…2016/7/27 Obesity“Models of energy homeostasis in response to maintenance of reduced body weight”…では、17名の入院肥満患者を対象にして10%(フェーズ1)と20%(フェーズ2)の減量を実施しました。減量10%達成時には安静時代謝量および非安静時代謝量いずれも減少しましたが、20%減量時には安静時代謝量は減少せず、非安静時代謝量のみが減少したことが報告されています。つまり、安静時代謝量はThresholdモデルで、非安静時代謝量はSpring モデルであると結論付けています。

この考え方に対する賛否は後述することにして、冒頭に掲げたテーマに沿って説明していきます。


短期間で急激なダイエットはリバウンドするので、時間をかけて長期的に行うことが重要です??

1969~2008年に発表された研究論文90件を対象に行われたSchwartz et al.のシステマティックレビューでは、減量により安静時代謝量が低下したが、長期より短期による減量の方が落ち込みは大きかったことが確かに報告されています。
しかし、現在はこの考え方は支持されておらず、寧ろ、短期の方が良い結果をもたらす意見が大勢を占めています。

それでは一連の研究論文をチェックしましょう。

Obesity Reviews
2010/6/24
Schwartz et al.
Relative changes in resting energy expenditure during weight loss: a systematic review.

1969~2008年に公表された論文90件/2,977名の男女データから計算した減量時の安静時代謝量の減少は平均-15.4±8.7kcal/体重1kgだった。減量期間6週間以上(長期)と2週間以上~6週間未満(短期)を比較すると、短期の方が落ち込みは大きかった…短期:-27.7±6.7kcal/体重1kg、長期:-12.8±7.1kcal/体重1kg


Obesity (Silver Spring)
2013/9/3
Jonge et al.
Effect of diet composition and weight loss on resting energy expenditure in the POUNDS LOST study

体重減少はエネルギー消費を減少させるが、食事の多量栄養素組成がこの減少に影響を与えるかどうかは不明である。811名の過体重/肥満者を対象に調査した結果、6ヶ月の減量で男性は-99.5±8.0 kcal/日、女性は-55.2±10.6 kcal/日の安静時代謝量の低下が認められた。多量栄養素との関連はなかった。24ヶ月でのAdaptive thermogenesisは明らかではなかった。


American Journal of Clinical Nutrition
2011/4/27
Stice et al.
Weight suppression and risk of future increases in body mass: effects of suppressed resting metabolic rate and energy expenditure

91名の若い女性を被験者として6ケ月の実験調査が行われた。その結果、減量の反動としてBMIの増加は予見されたが摂食障害にはつながらないこと、さらに、減量すると安静時代謝量/エネルギー消費量の低下にある程度の影響を及ぼすが、有意なBMIの増加には至らないことが報告されています。


The Lancet Diabetes & Endocrinology
16 October 2014
The effect of rate of weight loss on long-term weight management: a randomised controlled trial

現行の食事ガイドラインでは、急激に減量すると直ぐに元の体重に戻るという理由で、時間をかけて地道に減量することが奨められているが、豪メルボルン大学のJoseph Proietto教授が率いる研究チームから、これに待ったをかける研究結果が報告された。


New England Journal of Medicine
2013/1/31
Casazza et al.
Myths, Presumptions, and Facts about Obesity

“肥満に関する7つの神話” の1つとして、「急激な減量は時間をかけて徐々に痩せるよりも長期的な効果が低い」を挙げています。
“超低カロリー制限食で速く痩せるグループ” と ”低カロリー制限食(800~1200kcal/1日)でゆっくり減量するグループ” を短期(1年未満)及び長期(1年以上)に比べたランダム化比較試験のメタ解析を行った。その結果、短期的には超低カロリー制限食群の体重減少は低カロリー制限食群より有意に大きかったが(16.1%減 vs 9.7%減)、長期的には有意な群間差はなかった。


Obes Rev.
2001/12/25
Astrup et al.
Lessons from obesity management programmes : greater initial weight loss improves long-term maintenance

『時間をかけてゆっくり減量する方が、短期間で減量するより減量後の体重維持にベターであると一般的に信じられている。しかし、ウェイトマネジメントのファーストステップとして、より速く/より大きく減量するほうが、減量後の体重維持に利があることが1~2年間の追跡調査で明らかになった』と報告されています。


Int J Behav Med.
2013/9/23
Nackers et al.
The association between rate of initial weight loss and long-term success in obesity treatment: does slow and steady win the race?

平均年齢59.3歳の肥満女性(BMI:36.8)を対象に、6ヶ月のライフスタイル介入の後で1年間の追跡調査を行った。速く痩せる群(Fast:週当たり0.68kg以上の減量;69名)、中程度群(Moderate:週当たり0.23kg以上/0.68kg未満の減量;104名)、及びゆっくり痩せる群(Slow:週当たり0.23kg以上の減量)の3群に割り付けた。体重減少の平均値は、6ヶ月の時点ではFast群-13.5 kg/Moderate群-8.9 kg /Slow群-5.1 kgで、18ヶ月の時点ではFast群 -10.9 kg/Moderate群 -7.1 kg /Slow群 -3.7 kgで有意な群間差があった。6ヶ月および18カ月の時点でリバウンドでは、Fast群2.6 kg/Moderate群1.8 kg /Slow群1.3 kgで有意な群間差はなかった。“Slow群に比してより速く/より激しく減量する方が、短期的にも長期的にも減量効果は大きく、長期的な体重維持にも優れ、且つ、リバウンドしやすいということもない。


The Lancet Diabetes & Endocrinology
2014/10/16
Proietto et al.
The effect of rate of weight loss on long-term weight management: a randomised controlled trial

年齢18~70歳、BMI:30~45 kg/m2の204名(男性51名、女性153名)を対象にして、第Ⅰ相試験では、12週間で速く減量グループと36週間で徐々に減量グループの二群に無作為に割り付けて目標15%減の減量プログラムをやってもらい、第Ⅱ相試験では、第Ⅰ相試験で減量12.5%以上を達成した参加者を対象に144週間の体重維持試験を行った。その結果、減量を短期でやろうが長期でやろうが、リバウンドへの影響に有意な群間差はないことが確かめられました。


Obesity (Silver Spring)
2016/1/27
Vink et al.
The effect of rate of weight loss on long-term weight regain in adults with overweight and obesity.

過体重/肥満者の減量速度がリバウンドに及ぼす影響を調査することを目的として、BMI 28~35の57名を無作為に2群に割り付けました。
・低カロリー食(LCD)1,250kcal 期間12週間でゆっくり減量
・超低カロリー食(VLCD)500kcal 期間5週間で速く減量
減量期間後の4週間は維持カロリー食とし、その後9ヶ月の追跡調査を行った。

結果は、
両群の体重変化はほぼ同じ(LCD群: -8.2 kg、VLCD群: -9.0 kg、P = 0.24)
追跡調査後の体重増加は有意な群間差は認められなかった(LCD群: 4.2 kg、VLCD群: 4.5 kg、P = 0.73)
FFM(除脂肪体重)の減少率はVLCD群の方が大きかった(LCD群: 8.8% kg、VLCD群: 1.3% P = 0.034

両群の体重変化は同じで減量速度はリバウンドに影響しなかった。リバウンドについては群間差がなかった。しかし、食事制限後の除脂肪体重の減少は、ゆっくり痩せたグループより、早く痩せたグループの方が大きかったと結論付けています。


次のテーマはレプチン量と満腹感についてです。

レプチンは脂肪細胞に脂肪が吸収されると分泌されるホルモンだと勘違いしている人が多い。脂肪組織からのレプチン分泌は脂肪の取り込みではなく、インスリンを介しグルコースに大きく左右されます。レプチンレベルは、脂肪組織からグルコースを引きだす際には下がり、脂肪組織にグルコースを取り込む時には上がるのです。

レプチンはアディポサイトカインの1つで、間脳に位置する視床下部の食欲中枢に作用して食欲をコントロールするだけでなく、脳の中脳の領域(報酬系)にも働きかけ食欲を抑制します。

レプチンは、ダイエット直後は急速に低下し、その後は体脂肪の減少に関連しながら緩やかに減っていきますが、過食すると急激に戻ります。しかし、1年経っても元には完全に戻らないという研究報告があります。レプチン量がリバウンドをもたらすリスクの度合いはどれほどなのか気になるところです。


Sumithran et al.による研究では、体重95kg/体脂肪率52%の50名を対象に、10週間500~550kcalの減量食を与え、62週間のフォローアップを行っています。
10週目の終わりの減量平均値は-13.5 (14%)でした。
減量期間中の空腹時のレプチンレベルは約65減少しました。
その後は増加したものの62週目のレベルは依然としてベースライより約36%低かった。
62週目の体重は10週目よりは増えたが元には戻っていません。
維持期間は栄養士からアドバイスを受けましたが基本的には自由生活であり、また、代謝の落ち込みの有無も確認されていないので、レプチン量が元に戻っていないことが体重増加の理由であると決めつけることは出来ません。


もうひとつCalbet et al.の研究をチェックしましょう。
第633回 4日間の過酷なダイエットで体脂肪2.1kg減少”で詳述しているのでご参照願いたいが、血清レプチンはWCR期4日間で64%、DIET3日間で 50%、POST14週間では33%減少しています。
しかし、体脂肪はいずれの期間も増減少しています…WCR期間:-2.1kg、DIET期間:-2.8kg、POST1期間:-3.8kg、POST2期間:-1.9kg

確かにレプチンは視床下部の食欲中枢や脳の中脳の領域(報酬系)にも働きかけ食欲コントロールに影響します。しかし、レプチン量が肥満の主要因であるというエビデンスはありません。
最後に詳しく述べますが、レプチンの量が少ないため満腹感を得られず、ついつい食べ過ぎてしまうのであれば、カロリー計算を見直しセットポイント(維持カロリー)を再チェックするか、或いは、身体活動を増やせば解決できます。

To be continued Part-2