第1082回 飲酒は少量でも有害!?


お酒と健康リスクに関しては、2014/7/15 付け “第694回 適量なら酒は百薬の長!?” を最後にして取り上げていません。「適量はプラスだが、過度な飲酒は命を縮め、全く飲まねば意外と利益は無くマイナス作用する」というU字型説、つまり“酒は百薬の長されど万病の元” という故事をサポートする説に対し、「適量なら安全というのは間違いである」という逆説が拮抗していました。
決着は付いたのでしょうか?
直近の3つの研究論文を紹介します。

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一つ目は飲酒を肯定する研究論文です。

Annals of Epidemiology
2018 Aug28
Coffee and wine consumption is associated with reduced mortality from alcoholic liver disease: follow-up of 219,279 Norwegian men and women aged 30-67 years.

1994年~2003年にかけて心臓血管スクリーニングに参加した30〜67歳のノルウェーの男女219,279人を対象にして、コーヒーおよびアルコール飲料の摂取量とアルコール性肝疾患死亡の関係を調べたものです。
参加者をCause of Death Registryとリンクさせ、アルコール性肝疾患による93人の死亡を同定した。
コーヒー摂取量は0杯、1~4杯、5~8杯、≦9杯、そしてアルコール摂取量はビール、ワイン、蒸留酒、総アルコールについては0ユニット、<0~<1ユニット、<1~<2ユニット、≦2ユニットそれぞれ4つのカテゴリーに分類した。

その結果は、
各アルコール摂取量の1カテゴリー当たりのハザード比は、ビール2.06(95%信頼区間:1.62~2.61)、ワイン0.68(0.46~1.00)、蒸留酒2.54(1.92~3.36)だった。
コーヒーは1日平均5杯で層別化した場合、5杯以上に対して5杯未満でアルコール摂取量とアルコール性肝疾患とに強い関連が示された。

アルコール0ユニット/日に対する2ユニット/日以上のハザード比は、コーヒー5杯/日未満では25.5(95%信頼区間:9.2~70.5)、コーヒー5杯/日以上では5.8(同1.9~17.9)に達した。相互作用を分析したが有意だった(P =0.01)。

結論として、
「コーヒーとワインはアルコール性肝疾患による死亡と逆相関していた。総アルコール総摂取量はアルコール性肝疾患死亡率に悪影響を及ぼし、その関連の強さはコーヒー消費量によって変化した」と述べている。


二つ目は肯定的な研究論文への問題提起です。

Nature
2018/6/18
Controversial alcohol study cancelled by US health agency

アメリカ国立アルコール乱用依存症研究所(NIAAA)の助成で、毎日少量の飲酒は健康に良いことを示すための研究が行われていましたが、飲酒は少量でも有害という研究報告には触れずに、適度な飲酒は安全という結論ありきだった。同職員や研究責任者らと酒類業界に不適切な接触があることが判明し、上部組織NIH(アメリカの国立衛生研究所)が研究の中止を決定しました。


3つ目は否定論文です。

Lancet
2018/08/23
Alcohol use and burden for 195 countries and territories,1990~2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016

この研究論文の結論は、『飲酒に安全レベルはない。1日1-2杯の飲酒が健康に良いというのは神話に過ぎない。2016年には世界全体で約300万人が、飲酒が原因で死亡しており、そのうち12%は15~49歳の男性だった』ということです。

それではScience Dailyの解説記事を紹介します。

本研究の上席著者であるワシントン大学のEmmanuela Gakidou教授は、『先行研究が示すように、飲酒が早死・癌・心血管疾患と相関していることが今回の調査結果で再確認できた』と語っています。

本研究では、疾病負荷を推定する場合のエビデンスが欠如しているので、ビール、ワイン、酒類を区別しなかった。しかし、すべてのアルコール関連死と健康アウトカムに関するデータを用いて結論を導いている。


「平均消費量」とは標準量を意味し、本研究では10gの純アルコール(エタノール)と定義した。因みに、これはワイン(アルコール度13%)なら100ml、ビール(3.5%)なら375ml、ウィスキー(40%)なら30mlに相当する。

通常の1単位は、国によって異なる。英国では8gのエタノールであり、豪州10g、米国14g、日本では20gである。

本研究は、GBD(Global Burden of Disease)の年次調査の一部として、195の国と地域における1990年から2016年までのアルコール関連の健康アウトカムとパターンを年齢別/性別に評価したものである。

本研究では、飲酒に関連する23の健康アウトカム(評価項目)に対する相対的なリスクのメタ解析を行った…結核症、出血性脳卒中、下部拒絶反応、高血圧性心疾患、食道癌、心房細動およびフラッタ、肝臓がん、肝硬変および他の慢性肝疾患、喉頭がん、膵炎、乳がん、てんかん、結腸直腸癌、アルコール使用障害、口腔および腔腔癌、交通事故、咽頭および鼻咽頭癌、意図しない怪我、虚血性心疾患、糖尿病、自傷、虚血性脳卒中

「今やアルコールは世界の主要な死因の1つである。数百万の死を予防するために緊急に行動する必要がある」とランセット編集者Richard Hortonは述べています。

「この研究では、個人および集団レベルのアルコール摂取に関する694のデータソースと、アルコール使用のリスクに関する592の前向きおよび後ろ向き研究が用いられた」、「40カ国以上から研究者や学者など500人以上のGB共同研究者が研究に貢献している」、
「本研究は、現在までで最大のエビデンスを集めて、健康とアルコールの関係を明らかにした。飲酒は世界中で無数の方法で実質的な健康損失を引き起こしている」と、上級研究員兼筆頭著者Max Griswold氏は述べています。

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マイコメント
わたし的には、研究論文の「質」として飲酒を否定する論文の方が優っているように思えます。因みに、私は毎晩適量を飲んでいますが…