第1084回 ランニングの左右ステップタイムを変えるとエネルギー消費量は増大する


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人の歩行とは、前方に出した片足が着地する前に、着地点方向へ重心を移動させてゆくことです。つまり、“片足で体重を支持する立脚相”と“もう一方の足が地面を離れている遊脚相”からなり、この一連の動き全体を歩行周期といいます。立脚相は歩行周期の60%、遊脚相は歩行周期の40%を占めています。因みに、両足が完全に地面から離れている状態は走行と定義されています。陸上競技の競歩で両足が地面から離れると、走行したとみなされ失格となるのはこの定義に依ります。

移動中のエネルギー消費量を最小限に抑えるため、人間にはpendular(振り子様)とElastic(弾性)のメカニズムが備わっています。弾性的な移動はsymmetric (対称:ランニングなど) とasymmetric (非対称:スキップなど)にわかれ、pendular且つsymmetricな移動がウォーキングです。
Richard Ellis et alは、ウォーキングで左右非対称なタイムステップの代謝コストを調べました。42%非対称の歩行に変えると対称歩行に比べて総エネルギー量は80%増えたそうです。

ランニングのケースではどうでしょうか?
Owen Beck et alの研究を紹介します。


European Journal of Applied Physiology
19 July 2018
Step time asymmetry increases metabolic energy expenditure during running

アブストラクト

歩行能力を向上させるに当たって、コーチや臨床医は片側性身体障害者に、カ生体力学的に非対称的な歩き方にならないように努力するよう奨励します。しかし、片側性障害の有無にかかわらず、生体力学的に非対称性であること自体が代謝エネルギー支出に影響を与えるかどうかは不明です。長距離走のパフォーマンスに影響するのだろうか?

目的:
非対称なステップタイムで走ることが、障害のない人たちの代謝率に影響するかどうかを調べた。

方法:
障害のない10人にフォース(力)測定トレッドミル上を秒速2.8mで走り、同時に可聴メトロノームの鼓動に合わせて着地するよう指示した。メトロノームは、参加者の好ましいステップタイム(0%非対称性)相当のタイムインターバル、または非対称性が7%、14%、21%となるタイムステップに合わせた。ストライド時間はすべて一定とした。各試行中の着地反力および代謝率を測定した。

結果:
ステップタイムおよびスタンス平均垂直地面反力が10%増加するごとに、非対称性は総エネルギー代謝(net)を3.5%増加させた。
着地時間が10%増加するごとに、非対称性による総エネルギー代謝(net)は7.8%増加した。
非対称的なピーク制動力およびピーク推進地面反力、脚の剛性ならびに正および負の外的な力学的作用は、ピーク垂直地面反力ではなく、走行中の正味の代謝エネルギー量を増加させた。
ステップタイムを非対称的にすると、ランニング中の非障害者の正味の代謝エネルギー量が増加することが分かった。長距離走のパフォーマンスの最適化も可能であることを示唆している。

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