第1136回 2型糖尿病DiRECT研究をレビュー

DiRECT研究は2型糖尿病患者ではベータ細胞機能が不可逆的に失われるという従来のパラダイムを覆すものだと主筆者は強調しています。

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『Diabetes Remission Clinical Trial (DiRECT)』は、その名称が示す通り“糖尿病の寛解についての臨床試験”であり、英国のニューキャッスル大学のロイ テイラー教授とグラスゴー大学のマイケル リーン教授に率いられ実施されている。


The Lancet
2017/12/5
Primary care-led weight management for remission of type 2 diabetes (DiRECT): an open-label, cluster-randomised trial

この研究の目的は、“集中的な体重管理が2型糖尿病の寛解をもたらすかどうかの検討であり、主要アウトカムは、ベースラインから12ヶ月後の15kg以上の減量と糖尿病の寛解(HbA1c<6.5%)です。結論から申し上げると、“約半数の患者が12ヶ月後に寛解を達成し、糖尿病治療薬が不要になった”ことが報じられています。
詳細は次の通りです:

20~65歳、罹病期間≦6年、BMI 27~45kg/m2の2型糖尿病患者306名を対象として、介入群と通常ケア群(対照群)に割り付けた。
介入群では、3~5ヶ月間の食事置換(825~853kcal/日、炭水化物59%、脂肪13%、タンパク質26%、食物繊維2%)と、2~8週間の食事再導入(SFR:炭水化物50%、全脂肪35%、タンパク質15%)を行い、引き続き長期の減量維持のための構造化支援を実施した。

脱落や同意撤回を除く各群149名を対象とした解析結果:
12ヵ月後の時点で15kg以上の減量を達成したのは介入群36名(24%)対照群0名だった。
寛解を達成したのは介入群68名(46%)、対照群6名(4%)だった。
寛解の達成は減量の程度によって異なり、達成者は体重が増量した76名では0名、0~5kgの減量を維持した89名のうち6名(7%)、10~15kgの減量を維持した28名のうち16名(57%)、15kg以上の減量を維持した36名のうち31名(86%)であった。
平均体重は介入群で10kg減少し対照群では1kg減少した。


Cell Metabolism
2018/10/2
Remission of Human Type 2 Diabetes Requires Decrease in Liver and Pancreas Fat Content but Is Dependent upon Capacity for b Cell Recovery

和文にすると、“ヒトの2型糖尿病の寛解には、肝臓/膵臓の脂肪量を減らすことが必要だが、β細胞の回復力に依存する”です。

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糖尿病の罹病期間6年未満でHbA1c 6.5%以上の90名を対象にして、介入群と対照群に割り付けて、介入群は上記で説明した集中的な体重管理プログラムを実行した。

その結果、体重の減少が同様でも、空腹時血糖値やHbA1cが改善した患者と改善していない患者にはっきりと二分された。前者をresponders群(40名)、後者をnon-responders群(18名)として検討を進めた。

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糖尿病の罹患期間の平均はresponders群で2.7年、non-responders群では3.8年だった。
減量期の体重はresponders群で100.6±2.6から84.4±2.1 kgへ、non-responders群では102.1±4.4から88.7±4.4 kgに減少した。減量幅は各々-16.2±1.2 vs -13.4±1.4 kgで有意差は無かった。

肝臓に貯まった脂肪量は体重減少直後に両群いずれも同様に減少 (−13.4% ± 1.4% vs −11.9% ± 2.4%) した。
また、両群ともに血漿トリグリセリドおよび膵臓に貯まった脂肪も減少した。

しかし、第一相インシュリン分泌能力はresponders群で改善したが、non-responders群では体重が減少し、肝臓/膵臓の脂肪量が減少してもインシュリン分泌能は元に戻っていなかった。

この研究の結論としては、“薬物療法に頼らず糖尿病を管理するためには、β細胞が疲弊してインシュリン分泌能が不可逆的に失われるより前に、食事療法を始める必要がある”ということになる。


テイラー教授らは2年間の追跡調査を行い、その結果を “Two-year results of the randomised Diabetes Remission 2019 Feb7”で報告している。
その概要は、『24ヶ月後の時点で、介入群の35.6%(53/149)と対照群の3.4%(5/149)が寛解し、介入群の11.4%(17/149)と対照群の2.0%(53/149)が15%以上の体重減少を達成した。10kg以上の体重減少を維持した患者(45/272)の内、64% (29/45)が寛解を達成した。介入群の24.2% (36/149) が10kg以上の体重減少を維持した』というものです。
同教授は、24ヶ月に亘る集中的な体重管理プログラムで、10kg以上の体重減少により糖尿病患者の3分の2が寛解したと締め括っている。


1年後および2年後の結果を取りまとめると、下記グラフの通りとなります。
A: 15kg以上の体重減少
B: 寛解率
C: 減量別の寛解率

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マイコメント
“膵β細胞機能が不可逆的に低下してしまったらダイエットしても意味がない”ということは決してない点は見逃せない。

上述のCell Metabolismに記載された論文の和文記事は、糖尿病ネットワークでも閲覧可能ですが、そこでは“完治”という言葉が使われています。しかし、当該論文では治癒/完治(cure)といった言葉は一切使われていません。
テイラー教授の“Type 2 diabetes is not for life”や“reverse their diabetes”といった見出しの記事もありますが、内容を読むと“significant weight loss could actually result in lasting remission"…有意な体重減少が実際に持続的な寛解をもたらすようだ…と言っています。巷間では完治という言葉が一人歩きしている。

NICEガイドラインによれば、very low calorie diets (VLCD)は≤800 kcal/dayとされており、いわゆるリバウンドが起こるので勧められないと言っています。他方、この体重管理プログラムでは825~853kcal/日としており高いハードルになるのではないかとの声もあります。

また、この研究と高強度の筋トレを結び付ける人もいますが、そんなことはどこにも書かれていません。個人的には筋トレは有効だとは思いますが、個別性/継続性の課題と密接に関連します。或いは、過激な食事制限とトレーニングを組み合わせることで、コルチゾールの慢性的な昂進を招くといった副作用の危惧も捨てきれない。

Take Home Message としては、“何事も先送りせずに可及的速やかに対処することが肝要”ということですね。







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